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黒革の手帳を読んだ話

松本清張作「黒革の手帳」を読了しました。

あらすじはと言うと、銀行勤めで退屈な人生を送っていた30代の女性が一念発起して、銀座の高級クラブ経営という壮大なキャリアを描くも・・・という話です。

発行日が1980年代となっており、全体として当時の女性の社会進出の難しさや生き辛さが描かれていました。読書メーターでみなさんの感想を拝見すると、「因果応報」のキーワードが多くあり、たしかにそう読めなくもないのですが・・・。

『黒革の手帖(下)』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター

個人的には、「出る杭は打たれる」この社会への警鐘がこの本のテーマかと思っておりました。確かに主人公の女性は、嘘をついたり人を脅したりもしているのですが、自分の信念に従い、当時の社会問題(脱税目的の架空口座とか裏口入学)を罰していたわけで。しかも話の中には主人公より悪い奴らが大勢いますし。

結局、物語の最後には自分が利用していたと思っていた人達から総攻撃を受け、破滅へと向かってしまいます。因果応報がテーマであれば、他に悪いことをしている人たちはどうなっちゃうんですかね?全員破滅?

ということで、恨むべきなのは主人公ではなく、個人を破滅へと向かわす社会なのかなと思います。そもそも銀行員の女性にそこまでさせるシステムってどうなのって考えちゃいますよね。この意味では1980年代も今も変わらず、なのかもしれません。

そんなことを考えさせられつつ、黒革の手帳、面白かったです。